宇宙菓「月の石」―昭和44年の未来を味わう

食べた後の画像ですみません。この半額シールの陰にたぶん月から見た地球の写真が描かれています

スーパーで千秋庵の「月の石」というお菓子が半額になっていたので、何となく買ってみました。最近流行りの「昭和レトロ」商品かなと思いましたが、調べてみるといろいろなことがわかりました。

発売されたのは1969年。ノースマンより5年先で、人類が初めて月面に降り立った年です。アポロ11号の成功で世界中が宇宙開発に熱狂し、日本でも「アポロブーム」がおきました。千秋庵はその時代を象徴するように、このお菓子を「宇宙菓 月の石」として発売。今となっては、アポロを感じさせるお菓子はこの「月の石」と「明治 アポロチョコレート」位しか思いつきませんが、当時の空気を感じさせるネーミングです。

次にそのお味。ホワイトチョコレートでコーティングされた外観の中はブルーベリージャムを挟みこんだスポンジ生地で、実に今風の味。ホワイトチョコの甘さとブルーベリーの酸味がよく合い、60年近く前のお菓子とはとても思えません。

北海道のお菓子なら、酸味のあるジャムといえばハスカップを連想しますが、今でこそよく知られたブルーベリーを半世紀以上前から使っているとはなんとハイカラな。
ホワイトチョコレートも1968年に日本で初めて帯広千秋庵(!)が製造・販売したもの。しかし六花亭のルーツが千秋庵だとは知りませんでした。いずれも北海道らしさより最新・最先端感を強調している感があります。

1969年の札幌はオリンピックの開催前で、人の興味は大阪万博に向いている頃。まだ大きめの地方都市という位置づけでした。その後、地下鉄が開業し、オリンピックが開催され、「日の丸飛行隊」の表彰台独占やジャネット・リンの笑顔によって、札幌の名は世界へ知られていくわけですが、宇宙菓「月の石」が生まれたのは、そんな札幌が未来へ向かって走り始める前夜でした。
「月の石」は、そんな未来への期待感を凝縮した高度経済成長期の夢を、今でも変わらない味で伝えてくれる小さなタイムカプセルです。アルテミス計画による56年振りの有人月面着陸を2年後に控えた今こそ、ぜひ味わってみては。

一日千秋【札幌千秋庵】
https://note.com/sapporo_senshuan/n/n679e276ae69c

日本初のホワイトチョコレート
https://japaneserecords.org/japanese-records/6764